線型連立常微分方程式について

今日は, 数理生物で用いる(かもしれない)微分方程式

解法についておしゃべりしてきましたよ.

 

具体的には簡単な初期値問題で,

\begin{align} \dot{x}=Ax,\ x(0)=x_0 \end{align}

っていう問題です. ただし,

\begin{align}x\in \mathbb{R}^2,\ A\in Mat(\mathbb{R}^2,2\times 2)\end{align}

です. この時, 安直に考えて,

\begin{align} x(t)=e^{tA}x_0\end{align}

が解になる気がしませんか.

では, この\begin{align}e^{tA}\end{align}って何なの, という疑問が生じます.

ここで, 大学初年度にお世話になったであろう, Taylor展開を思い出しましょう.

\begin{align}e^{tA}=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(tA)^n}{n!}\end{align}

と展開してみると, 右辺の無限級数が収束するかどうかが問題になることがわかるかと思います.

初めてこの数式を見たとき, 「胡散臭いなぁ...」と思ったものです.

無限級数を用いて表すならば収束するということを保証しなくてはならないのに, 当時の僕にはその拠り所が分かりませんでした.

ってわけで, 現在僕が理解している範囲で, 少しだけそのお話.

 

まず, 行列にノルムを定義します. 定義するノルムは公理を満たしていれば何でも良いのですが, とりあえずは次のノルムをば.

\begin{align}\|A\|=\sup_{\|x\|_2=1}\|Ax\|_2.\end{align}

ただし,

\begin{align}\|x\|_2=\sqrt{x_1^2+x_2^2}\end{align}

はEuclidノルムとします. 補足すると, 行列が有限次元ですので, 定義できるノルムは全て等価であることに注意ですね.

さて, このノルムを用いて件の行列エクスポネンシャルを評価すると, 三角不等式とかその他色々を用いて,

\begin{align} \left\| \sum_{n=0}^{N}\frac{(tA)^n}{n!} \right\| & \leq \sum_{n=0}^{N}\left\| \frac{(tA)^n}{n!}\right\| \\ & \leq \sum_{n=0}^{N}\frac{t^n}{n!}\| A\|^n \end{align}

\sup\|A\|=Mとすると,

\begin{align} \sum_{n=0}^{N}\frac{t^n}{n!}\| A\|^n & \leq \sum_{n=0}^{N}\frac{(tM)^n}{n!} \\ & < e^{Mt}. \end{align}

ってわけで, めでたく収束が正当化されたわけです.

ここから先は, 解がどんな形になるのか, 具体的に調べていきます. 割と準備が必要なので, 気が向いたときにでも, またいつか.